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 東京から新幹線で約1時間、そこには閑静でお洒落な町がある。木立の中をサイクリングしてみたり、こだわりをもったレストランでちょっと贅沢なランチを食してみたり、繁華街からは少し離れた場所で自然の中を散策してみたりと、それぞれの時間を丁寧に過ごす人たちが集まる町、そこが軽井沢である。駅に到着して新幹線を降りると、都会の気候になれてしまっているせいか少し肌寒く感じる。その気候が都会との距離を感じさせるのと同時に、「旅に出てきたな」という満足感・高揚感を味わう事もできる。今回は秋の紅葉の見頃な軽井沢をご紹介していきたい。
 
 駅から自転車をレンタルして町の中を散策してみる。一枚の地図と標識だけを頼りに目的地をその場で決めて目指す。そのちょっと曖昧な行動が、小回りの利くサイクリングの醍醐味であり、自分自身の時間と心の余裕を象徴しているようでもある。しばらく走って少し冷えてきた手に、レンタサイクリングのおじさんが「手袋変わりに」と貸してくれた軍手をはめると、自然と身体がポカポカしてくるから不思議である。道中、焼きたてパンの良い香りを漂わせる小さなパン屋さんに思わずふらっと自転車をとめた。店内に並んだふんわりとしたパンの中から好きな品をトレーにのせていると、小さな喜びがこみ上げてきた。

 目的の雲場池は一周20分ほどの大きさで、別名「スワンレイク」とも呼ばれるカラマツやモミジの木々に囲まれた、とても落ち着いた雰囲気の場所である。池の水面には紅葉の見頃を迎えた周囲の景色が線対称にくっきり映し出され、水面がまるで鏡の様になっている。途中ベンチに座り、先ほど買ってきたまだ焼きたてのパンを頬張った。都会の喧騒を忘れ木立の中で食べるランチ、今日の自分にはまるで「スペシャルランチ」を食べているかような気がして、何とも言えない格別な気持ちが込み上げてきた。
 
 午後は一変して軽井沢駅からバスに乗って少し中心街から足をのばしてみることにした。走ること約40分、今までの景色とは一転、突然別世界に来たような黒い溶岩の奇観が辺り一面に広がっている荒々しい景色が視界に飛び込んできた。ここ「鬼押出し園」は1783年の浅間山大噴火によってできた岩海の奇観が、噴火の激しさを物語る国立公園である。「火口で鬼があばれ岩を押し出した」という当時の人々の恐怖の心情がこの名前の由来となっている。

 赤い惣門をくぐると自然遊歩道が整備されており、天然の奇岩や浅間山の勇姿を楽しみながら散策することができる。途中に厄よけ観音堂があり、これは噴火の爆発で被災死亡した人々の霊を慰めるため上野寛永寺別院として建立されたものである。さらに遊歩道を進んでいくと、大きな岩がまるで雲をつきぬけてその先の見知らぬ世界へ飛び出しているのでは?と思えるほどの力強い光景が広がっていた。空に近いこの道は浅間高原を一望できる、まさに「空の散歩道」と言っても決して過言ではないだろう。黒い溶岩が紅葉の見頃を迎えた高山植物の赤色や黄色を一層引きたたせていた。

 

 展望台から浅間高原を眺めると、まるで絨毯の様な紅葉の景色が一面に広がっていた。じっと耳を澄ましてみても聞こえてきたのは「木々のざわめき」と「鳥のさえずり」だけで余計な音は何も聞こえてこなかった。このまま紅葉の絨毯に乗って空中を旅してみたくなってしまうほどの開放的な気持ちになれた。黒い溶岩が織り成す芸術の中に散りばめられ色づいた植物は、日本の四季の喜びを教えてくれる優しい光景であった。

 
 
 
 

掲載期間:2007年11月末出発まで
 



 

 
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