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 上野から赤い特急列車に乗って猪苗代駅をめざす。新幹線と比べればスピードもどこかゆっくりだが、この特急は期間限定で上野と会津若松・喜多方駅と一本で結んでいる便利な列車である。「あいづ」と大きくかかれた列車の先方部分はちょっとした写真撮影のスポットになっておりその赤く古い列車は人々に親しまれている。上野からは約3時間で猪苗代駅に到着する。駅の看板は木板に「猪苗代駅」と手書きで古めかしさに味わいがあり、この珍しさから東北の駅100選にも登録されている。構内にぶら下がっている風鈴の音が「ちりんちりん」と静かな駅にこだましており、夏の風物詩が来訪者達を涼しげに歓迎してくれる。今回は残暑のハイキングにも最適な裏磐梯にスポットを当ててご紹介していきたい。
 
 駅から送迎バスに乗りめざすは裏磐梯猫魔ホテル。ホテルまでの道中にはスキーシーズンでも賑わいをみせこの地域の特性か、大型のホテルや森の中の少しお洒落なレストランなどを目にすることができる。このホテルの良いところはなんといってもそのロケーションに優れているところで、ホテルの露天風呂からは桧原湖を一望、裏磐梯の名所でもある五色沼へのハイキングコースの入口もホテルの目の前にある。また、桧原湖では遊覧船で湖上散策することができるのでオススメしたい。遊覧船が岸から離れていくにつれて磐梯山がだんだんとそのダイナミックな姿を現してくる様はまさに圧巻の一言、噴火の跡が今も尚残り自然の驚異を感じさせられる一方、その噴火が生じてできた美しい沼の数々に自然の明と暗を考えさせられる光景である。
 
 五色沼自然探勝路はゆっくり歩いて一時間半(約3.7km)の遊歩道。前日に降った雨のせいで少々歩きにくい山道だったが、美しい景色を眺めながら歩いていると足取りも自然と軽くなる。また日が昇ってくると、沼の周囲の草木に残っている水滴に日光が反射してキラキラと光り、雨上がりのハイキングも悪くないと思ってしまうのである。天の恵みは、散策する人たちに思わぬ副産物を与えてくれる。

 散策路にはシダがたくさん生い茂り、道がくねくねと曲がっているために次の光景が予測し難く、なんだか少しわくわくする。そのためか、沼が草木の間から見え隠れしてくるとその感動は実に格別である。入り口から30分ほど歩いていくと、コバルトブルーの沼が見えてくる。正面から眺めると周囲の景色を線対称に映し出す鏡のようであり、太陽の光の加減によって沼の色が微妙に変化するのでとても神秘的な感じがする。天候、季節、見る角度、時間、水中植物などによって一瞬一瞬違う青色が造り出される沼は、自然が織り成すまさに芸術品である。様々な偶然が重なりあってできる沼の美しさは、今しかみられないとい喜びと、もう二度と同じ景色はみられないという気持ちが交差し複雑な気持ちにもなる。散策路を歩いて一時間ほど経ったころ、五色沼の中ではもっとも大きい毘沙門沼がみえてくればもうすぐ終着点だ。この沼ではボートに乗って湖上散策をしたり、近くに土産店などもあるので観光客でにぎわいをみせている。
 

 裏磐梯には今から約100年前になるが、磐梯山が噴火した際に村が崩壊したという悲しい歴史がある。磐梯山は噴火の跡を今でも残しながら、裏磐梯を見下ろすように聳え立ち、その様は自然界の厳しさを物語っているようにも見られる。一方で色彩豊かな沼の美しさもその神秘的な美しさはさることながら、背景にある悲しい歴史を忘れまいと後世に生きる人々へのメッセージとしても輝きをはなっているのではないだろうか。

 
 
 
 

掲載期間:2007年11月末出発まで
 



 

 
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