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 荻窪駅を下車して商店街を抜けるとそこは閑静な住宅街。そんな住宅街の中に公園の入口がある。一見外からみると木がたくさん茂っており普通の公園と何ら変わりないような感じがするが、この公園には古めかしい切妻づくりの檜の門とよばれる正門があり、左右に築地塀のあるどっしりした構えになっている。前に佇むとその先へ一直線に続くイチョウ並木の道が見え、なんだか吸い込まれるように中に入ってみたくなる。今回は大田黒元雄氏の屋敷跡を杉並区が日本庭園として整備した公園、「大田黒公園」にスポットをあてて紹介していきたい。

 
 大田黒氏は日本で初めてドビュッシーやストラビンスキーなどを紹介した音楽評論家として昭和時代に活躍し、この地で音楽活動を続けてきた。この公園の30%にあたる2,679uの土地は公園にしてほしいという本人の遺志により、ご遺族から杉並区に寄付されたものである。


 少し背の低い正門をくぐり抜けると、まるで別世界に来たかのように樹齢百年ほどの太く古めかしいイチョウ並木が一直線に並んでおり、日光の光を浴びてその影を並木道に落としている光景に思わず息をのむ。静けさからか、蝉がなく声、木々のざわめき、うっそうとした巨木の数々、日光浴びた葉がつくりだす影・・・たくさん日常なら気付きもしない発見がまさに感動の連続である。並木道をしばらく歩いていくとまた小さな門があり、さらにそこを抜けると公園が目の前に広がってくるのである。
 
 駅の周辺には大型のデパートや建物があるにも関わらず、ここにはすばらしい景観を邪魔するものはなにもなく、ケヤキ、アカマツ、シイノキなどの木々が生い茂っていてる。それらが織り成してつくりだす木陰は、ゆっくり読書をしたり、ベンチで身体を休めたりするのに最適な空間である。また、園内を流れる細い水路は、次第に幅を少しずつ広げながら木立の間を通り抜け、庭園の池に注ぎ込んでいる。それらの風景は都会にいることを忘れさせ、まるで深山の中にいるような雰囲気にさせてくれる。
 
 園内をぐるっと歩いていると、やがて緩やかな階段の先にレンガ色の建物が愛らしく建っているのがみえてきた。

この建物は昭和8年に建築されたもので、当時としては珍しい西洋風の建築物である。入口すぐ脇の下駄箱の上には、男女別の入場者数カウンターが置いてあり、入場者は来館を自らカウントする仕組みにになっている。建物の内部には生前氏が愛用していたスタンウェイ製のピアノ、蓄音機などが残されている。内部は少し薄暗く、当時のままの僅かな灯りがついているだけであるが、日光の光がそれを助けるように大きい窓から射し込んでいる。その光景は、まるで現代社会が忘れかけた「何か」を問いかけられているような気分になる。大きい窓の向こうに映し出される緑いっぱいの光景の中で、音楽活動に貢献した姿をふと想像してみると、優しいピアノの音色が今にも聞こえてきそうである。
 
 

掲載期間:2007年9月29日出発まで
 



 

 
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